「僕」  2009年  9月  秋

「ぼく、 僕、起きて、ほら早く、起きてったら。」
どこか遠くで僕を呼ぶ声が聞こえる。
う~ん何?  そーと目を開けてみると、そこにはお父さんとお母さんの顔があった。
「ほら、起きて!僕の地鎮祭よ!」
「え!?地鎮祭?  地鎮祭!  えー僕の!?本当に? 僕が建つの!?」と半信半疑で飛び起きてあたりを見ると神社の宮司さんや工務店の方々がいた。
やんちゃな息子さんも病院から外出許可をもらって立っていた。
息子さんはちょっと照れたような感じで「よおっ」と言ってきた。
僕はあまりお母さんに心配かけないように文句の一つでも言いたかったが、お母さんが「まぁまぁ、今日は特別な日だから」って

厳かに地鎮祭が始まった。
住所を読み上げる時、番地が隣のラベンダー色のお姉さんの番地を読み上げた。
お父さんとお母さんの肩がピクッと震えた。
僕は「あちゃー、違うよ、その番地じゃないよー、なんでー?」
式の最中に中断も出来ず一通り終わった後、営業員さんが謝ってきた。
ちゃんとFAXで正式な住所を送りましたと。
これで3回目、契約時の番地、地盤調査報告書の番地、地鎮祭での番地、どれも隣のお姉さんの番地になっている。
その都度訂正しますと言うけれども・・・
たかが住所と思うかもしれないけれども、やっぱり間違えないでほしいと思う。
だって、お父さんとお母さんにとっては大切な事だと思うんだけどな・・・・・
ちょっと複雑な気持ち・・・

そしていよいよ僕が建ち始めた。