「僕へ」

5月の末に僕へ手紙を届けてから、もう6ヶ月が過ぎてしまったのね。時が経つのはとても早くて、やっぱり中々追いついていけません。
こちらは、すっかり秋から冬へとなるようで、白鳥も飛来して来たとの事です。今年の夏は雨ばかりで、夏は7月で終わってしまったのかしらと錯覚する位8月はずーと雨でした。
また、台風が来て去ったと思ったら、また台風と・・・忙しい秋ですね。
そんな中、お父さんは突発性難聴になってしまい、お母さんはとても心配でした。原因はわかりませんが、ストレスだそうです。もう、お父さんの大好きなオーディオ達に囲まれての最高の音楽が6年と8ヶ月も聴けていません。仕事から疲れて帰ってきて、また休みの日の至福の一時で音楽を聴いてニコニコと笑顔でいたお父さんはどこかへ行ってしまいました。アパートはとても狭く、また音がけっこうもれる為、今はなるべく音をたてない生活で、とても窮屈です。本当に窮屈で、めったに喧嘩しないお父さんとお母さんでも、休みの日に雨で何処にも出れない時、洗濯物に取り囲まれて、ちょぴりギスギスしてしまいます。お互いストレスが溜まっているなーと感じます。

前回の手紙で、僕に須賀川での裁判の事を書いたと思うけど、担当した弁護士先生の講演を聞く事が出来ました。注目したいのは、僕の事案と非常によく似ている点でした。平成23年の東日本大震災で、盛り土の法面が地盤崩壊して、住んでいた住宅の基礎地盤に亀裂や割れ目が生じ傾くなどして、使用不能になったとの事でした。
お母さんは専門知識が無いけれども、「盛り土の敵は水である。」と言う点はわかりました。きちんとした排水対策をしないと危ないと言う事もわかりました。僕が居た場所は盛り土の法面高が20m超の高盛り土。現に震災後、法面を補強していた業者さん達から水がすごく出ましたよ。と言われたのは僕も聞いてたよね。
須賀川の住民の方々は平成6年~8年の間に住宅を建設して、東日本大震災が起こるまでは、これと言って支障もなく生活していたんですって。それに比べると、お母さん達は引っ越してすぐに異常を感じていたし、普通、地盤調査を2回も行うなどは、あまり例が無いんですって。また、僕の後ろの土地に家を建てる予定だった方からも、陳述書が頂けました。
震災前に地盤調査を行った際に業者の方から「この土地は地表面から地下の5mまでの間に自沈層があり、不安定な地盤です。通常の基礎では駄目です。ズブズブで危ないです。地盤改良するか、杭を打つかのどちらかですが、杭は狭い範囲で打つので、費用は200万円位かかります。」と告げられたそうです。その1カ月後、東日本大震災が発生し、安齋さんのお宅の地盤が崩れたと聞き、実際に見に行った所、あまりの酷さに驚き、このまま家を建てるのは怖いと考え、契約を解約したそうです。
僕はただのべた基礎、しかも法面ギリギリ、地盤調査も法面の角地にも関わらず、真ん中3点。この違いは何なのか知っている方がいたら教えてほしい。
最近、思うの事は東日本大震災から、もう6年と8ヶ月、まだ6年と8ヶ月と思うのか、時間だけがあっというまに流れ取り残されいる感じです。今年の3月で借り上げ住宅が終わり、今は既存のローンとアパートの家賃を支払っているけれども、もう跡形も無い住宅ローンを毎月支払っているのは経済的に」とても苦しいし、悔しいです。

裁判は、本当は9月でしたが、12月に延期になりました。詳しい理由はわかりません。

たまに、僕が居た場所を尋ねるけれども、そこは静かで・・・僕が居たのは幻だったのかしら・・・
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僕は確かにここに居た。たった1年だったけれども、ここに居たのよね。

今日は平成29年11月11日。