僕の解体の日が決まった。
それは11月18日(月)の週からだ。
天候の具合により、はっきりとした日はわからない。
でも確実にお別れの日は近づいている。
覚悟はしていたけれども、その日が近づくにつれ何ともいえない悲しさや寂しさや怒りがこみあげてくる。
解体業者の方達が僕を見に来た時、「もったいない、もったいない。」と連呼していた。
「でも、これじゃ住めないよな~、中は傾きと壊れ方が凄いね。」って。
僕も本当にそう思う。だって一年だよ。
それもあれほど地震に強い家なので安心してくださいって言ってたのに・・・・・・
最近お母さんは天気の良い日には必ず僕に逢いに来てくれる。
そしてお掃除をしている。
僕は「お母さん、何やっているの?今さらお掃除しても僕はもう解体されるんだよ。」そう聞いてみると
「だからお掃除するの。僕はもう傾きも酷くてキズだらけで、ほこりも凄いし、このまま解体されるのはお母さんは耐えられない。
だから、せめて最後にもう一度ピカピカにするの。そして僕を送り出したい。
お母さんの自己満足かもしれないけれども最後に僕にお母さんからしてあげられるのは、これしかないと思ったの。」
僕は嬉しかった。そりゃ埃だらけで解体されるよりは綺麗な方が嬉しいけれども、何だかその分いっそう悲しくなる。
「お母さん、僕がいなくなっても大丈夫?」
「たぶん、駄目だと思う。今はまだ僕がこうしてこの場所に建っているけれども、解体されて更地になるなんて想像できない。悲しいし、寂しいし、悔しいよ。今は感情をコントロールするのに必死なのよ。」
そう言ってまた黙々とお掃除を始める。
あ~そうだよね。これからっていう時にこれから想い出がたくさんできるはずだったのにね。
なんで営業員さんは地盤調査報告書に間違った記載をしたのだろう?きちんと本当の現場状況を地盤調査課へ送っていて、僕の建つ位置が決まっていたのなら、また違う結果だったんじゃないかと僕は思った。