「僕」  2010年   3月

出だしは最悪な引き渡しとなったが、新しい生活が始まった。
いつまでもクヨクヨしていても仕方ないし、あの営業員さんは2週間後のアフター訪問来ますと言っていたのに2度と現れなくなった。
僕も顔も見たくないから  いいやって思った。
すっかり変テコな形になったテレビボードも今までのいきさつをすべて統括責任者に伝えて直してもらった。
けれどもオーディオ類達は結局入らなかった。

新しい生活はお母さんには驚きの連続だったらしい。
お母さんのお城はキッチン、念願のL字型!!  ひろ~~い。
流しの高さもお母さんの身長に合わせて90cmにしてもらったからもう腰も痛くない。
お母さんは食洗機に興味があるらしく、なんこんなに綺麗に洗えるのかしらね、これがスケルトンだったら見れるのにねーって。
IHもなんで電気で料理ができるのかしらねーって。
あげくのはてにはグリルは使うと汚れるから単品で売っている魚焼きグリルを買おうと言い出すしまつ。
さすがにそれは家族に反対されました。

お母さんは朝も早い。早い時は4時30分頃から起き出して掃除を始める。
「お母さん、僕はもうちょっと眠いよ~、なんでそんなに早く起きるのー?」
「だってね、嬉しくて嬉しくて仕方ないのよ。こんな素敵な家で暮らせるのがって言ってモップで僕をコチョコチョする。   くすぐったいよ~。
「お家はね子供と同じなの、ちゃんと手をかけてお手入れしてあげないとね。」
「それじゃぁ僕はお父さんとお母さんの子供なの?」
「あたりまえじゃない!大事で大切な子どもよ。これからずーと一緒に時を重ねていくのよ、宜しくね。」
う~ん  ちょっと照れるけれども嬉しいな。こちらこそ宜しくお願いします。

インターホンの保護シールも給湯のお知らせのシールも剥がしてしまうと指紋で汚れるからってお母さんは剥がさない。   壊れてしまった今でも剥がさない。

そういう訳で僕はいつもピカピカだ!