「僕」   2010年  春 4月

今日は待ちに待ったお父さんのオーディオ類達が僕のお家にやってくる。
いつもはお母さんに起こされても中々起きてこないのに、この日は起こされる前に起きてソワソワしていた。
車の音が聞こえると、お父さんは満面の笑みでお出迎え。
お母さん、ちょっぴり ヤキモチ・・・

オーディオ専門の方々、総勢4人でやってきた。
まずはオーディオルーム!
お父さんの好きな音は臨場感にあふれ、生演奏の音がいかに自宅で再現出来るのかに挑戦している。
まだ途中だが70%位は達成しているが、まだまだ研究の途中だそうだ。
環境も整えなくてはいけないので、広い土地を選んだ訳。

それと、それに伴った機材。
まず、JBLのスピーカー。マッキントシュのアンプ。
MC275の真空管、これは高域用でバイワイヤーで聞いていた。
MC500は低域用。
C42はコントロールのアンプ。
レコードプレイヤーはやはり、オーディオ大好きな先輩が自作した物を譲りうけていた。
もちろん電源ケーブルも通常のケーブルではなく専用のケーブルを使用していた。

これで音楽を聴くともう最高!僕も一緒になってうっとりして聴いていた。
音楽とは、楽器の音とはこういうものなかと初めて解った。
お母さんが何も文句を言わなくなった訳、わかりました。

そしてシアタールーム!
普通は5.1chサラウンドシステムが主流らしいが、いやいやお父さんのは6.1chサラウンドシステムです。
メインスピーカー 2台
サラウンドスピーカー 2台
サブウーハー     2台
センタースピーカーがフロント、リアで2台

これに100インチのスクリーンが下りてきて、映画見てごらん!
特にアクション映画やSF映画は言葉では言い表せない位音が駆け巡る。
お父さんは映画館のよりこっちの音の方が凄いだろ~と自慢する。
またお父さんとお母さんはMISIAの大ファンなので、DVDを観て感激して、すっかりプクプク体型になってしまったお母さんは一緒なって踊っている。
本当にコンサートさまがらの迫力です。

でもお母さんは触るのは禁止。唯一スクリーンの上げ下げのリモコンだけ触っていいんだって。
お母さんは下手に触っておかしくなってしまったら、大変だから、その言いつけを忠実に守りスクリーンのリモコンを上げたり、下げたりして喜んでいる。

全部のセッティングが終わる頃にはすっかり日も暮れてきて、オーディオ屋さん達が帰って行き部屋に戻って来たお父さんはオーディオ類達を見まわした後、これまでに見た事もない優しくて可愛い顔をしていたんだって。
よっぽど愛おしいんだね。
お母さんちょっぴり上のヤキモチ・・・

このお話には続きがあり、震災後の今年(2013年)思い切って展示会に行ったんだって。
お母さんはまたお父さんが落ち込んでしまうのではないかと少し心配だったらしいけれども、お父さんのたっての希望で郡山のビックパレットまで行く事にした。
展示場に入って行ったお父さんの目はまんまる!
時代は4Kの世界だった。私達ってもしかして浦島太郎???
食い入るようにスピーカーやアンプを眺めるお父さんを見て、お母さんはヤバイと思って、「私はロビーで待っているね。」って言ったのに聞こえているのか、聞こえて無いのかフラフラと4Kのシアタールームに吸い込まれて行った。
一体どの位の時間が過ぎたのか、シアタールームから出てきたお父さんの目のなかには少女マンガみたいに☆☆があったんだって!!
そしてニコニコしながらまた両手いっぱいのパンフレットを持ってたんだって。
とりあえず、お母さんは見なかった事にしたらしい。