[50分の1の僕」

僕が50分の1の姿になって私達の元に帰って来る。

僕が解体されてから、もう2年が過ぎてしまった。

私はすっかり更地になってしまった僕のもとへと何回となく通っては「ここが玄関、そしてリビング、和室があって、ここらへんがキッチンかな」などど言いながら、目をつぶると鮮明に記憶が蘇り、まるで本当にまだ、僕の中に居ると錯覚してしまう。

でも目を開けると、僕の姿は無く、風がサラサラと私の頬にあたり現実に戻る。あーそうか、もう居ないんだっけ・・・・・・

そんな時、NHKの番組を見ていたら「想い出の家づくり」というので、いわき市の川島工房さんが紹介されていた。原発や津波で家に帰りたくても帰れない人達がせめて住み慣れた我が家を模型で再現してくれるという番組だった。

私は目が釘づけになってしまった。   そう!  これだ!   どうしても、もう一度逢いたい。

いくら頭の中には鮮明に僕の姿が残っているとしても、月日が経つうちに薄くなってしまう。写真に残っているといっても、それは写真でしかない。

そんな時に川島さんに出会えた。さっそく連絡を取り、持てるだけの資料を持って、いわきへと出向いた。私達の熱い想いを川島さんは熱心に聞いてくれた。

私達の希望は2010年の2月に引き渡された時期に戻してほしいという事。そして、そこには主人と私と僕が居て、これから始まる新しい生活へ向けて夢が広がり、希望に溢れた家にしてほしいとお願いしました。

僕ではないけど、僕。ずーと壊れない僕。返事もしてくれないけど、それでも私は満足だ。来月は「50分の1の僕」に逢える。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA    川島さんの作品です。

 

*私のホームページ、ブログを読んでいただいて、ありがとうございます。何とか2年ぶりに更新する事が出来ました。励ましのメールをたくさん頂きありがとうございます。また、全員の方へ返信できない事、お詫びいたします。私達はまだ、裁判中です。とても長い、長い戦いです。でも応援してくれる皆様がいてくれる事でとても心強いです。頑張ります。